もしも興味と技術がない若手社員が配属されてきたら

2023年5月5日

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今回は技術全然関係ありません、ただの情シス日記を書いてみます。管理人が思ったことを書きなぐっただけです。何かの答えはあるかもしれないし、ないかもしれませんので悪しからず・・・

もしもこんな部下、後輩が情シスに配属されたら・・・

まずは想像してみてほしい。
あなたは中小企業の情シスでユーザーサポートやサーバーの管理や新システムの導入を忙しくこなしている。
そんな中、情シスの機能強化ということで新しく若い社員が配属されてきた。
その社員はさしてITに興味があるわけでもなく、自分から情シスをやりたいと思っているわけでもなく、とりあえず安定して休みもあって一定の給料ももらえるということで希望した様子。
私みたいに自宅にWindows ServerとAD立ち上げて楽しむような変人ではなく、なんなら両親がやってる年末の年賀状と地域のビラ作りぐらいしか家でPCを使わないのだそうだ。

人的リソースが多かったり、知名度の高い大企業であれば「そんな人材に情シス業務を任せるわけにはいかーん!」と一喝、配属を拒否するのかもしれない。
しかしへーしゃは中小企業、なかなか若い人は入社せずに、1年たてば社員の平均年齢が1年繰り上がるような始末。ただ若いというだけで貴重な存在なのだ。
せっかく配属されてきたのに「使えない」の一言で終わらせられるほど単純ではない。ましてや次の配属がやってくるのかどうかなんて完全に望み薄だろう。
それに勤務態度には特に問題はない。言ったことを無視するとかやらないとか、勤務中に消失するとか無断欠勤するとかは無い。日本の企業の勤め人としては何も問題は無い。

つまりどういうことかというと、能力不足を理由に転属させる選択肢など取れないということだ。

少し話は逸れるが、そもそも”プログラミングの学校”はあっても”情シスの学校”はほとんど見かけないし、あったとしてもそういう学部出身の大学生なんて絶対数が少ないだろう。たとえSIerから情シスに転身した人材でも情シスとしては初心者というケースはいくらでもある。
程度の差はあれど、情シス経験者でもなければそう簡単に「はい、これやっといて」とはなりにくいことが多い。もともとベンダー側にいた人が簡単にベンダーをコントロールする側にはなれない。

OJTとOFF-JT

業務にはOJTで教える、経験する方がよいことと、OFF-JTで教える方がよいことに分かれる。
柔軟で臨機応変な対応が求められる業務はOJTが向いていて、体系化された知識や理論はOFF-JTが向いていると思う。
OJTはそのための時間の確保という点ではやりやすい。何かの発生した業務を新人と一緒に時々アドバイスも交えながら解決、処理していく。もちろん自分一人でやった方が速いかもしれないが、それでも仕事自体は進む。たとえ0.5倍速の処理速度だとしても、新人の成長も得られるのだから別に0.5倍速でも構わない。

ところが業務の内容によっては0.5倍速では許されない場合もある。もしくはOJTでやってると0.5倍速どころか0.05倍速ぐらいになってしまうこともある。
そんな緊急度の高い仕事を新人に任せられるようになるにはOFF-JT、つまり前提知識の基礎作りが寄与するのではなかろうか。
”システムにアクセスできない”という事象の解決に際して”pingコマンドを知っているかどうか”で使える技が変わってくる。行き当たりばったりが多い情シスの現場でもある程度のベースとなる知識は必要だ。

さて、OFF-JTのいいところは時間をしっかりとって体系的に学習できることだ。OJTだとどうしても”業務の遂行”がついてまわるので、今の仕事を終わらせるための行動をとりがちだ。
例えば先ほどの”システムにアクセスできない”という事象に対して、

サーバへのpingは応答ある?⇒ある
自分のPCでシステムにアクセスできる?⇒できる
その人のPCへのpingは応答ある?⇒ない
その人のPCは社内無線つながってる?⇒間違えて来客用無線につながってました、社内無線に接続したらOKでした

という流れで解決したとして、新人に「サーバのIPアドレス宛にpingコマンド実行して」「システムのログイン画面表示してみて」「その人のPCのIPアドレス宛にpingコマンド実行して」「社内無線つながってるか確認して」と指示することはOJTでも可能だ。
ところが、なぜそうするのかをOJTで教えることは難しい。ましてやユーザーはシステムが使えなくて仕事が止まっている状況だ。
一番の理想は、これらの一連の体験を新人と一緒に進めた後にOFF-JTで”なぜそうしたのか”、”pingコマンドで何が分かるのか”などなどを説明することだろう。

OFF-JTと時間の限界

というわけでOFF-JTでしっかり時間を割いて説明することで新人の成長の糧にしたいところだが、OFF-JTにかかる時間は相手の持っている基礎知識で変わってくる。
すでに基本情報を持っているような優秀な若い新人であれば、”pingコマンドでネットワーク層以下の問題なのかどうか分かる”という説明を理解してもらいやすい。
しかし今回配属されたような新人の場合はOSIモデルやDARPAモデルという考え方が無いかもしれない。そもそもネットワーク通信においてパケットという単位で情報が行き来していることすら全くイメージがついていないかもしれない。

あえて重ねて振り返るが、「そんな素人人材は情シスとしてやっていけない」と切り捨てることはできない。この記事の思考実験ではその選択肢は排除している。

そうなるとまずはネットワークの基礎からOFF-JTで教える必要がある。すると今度は時間の問題が出てくる。
OFF-JT最大のデメリットはOFF-JTをやっている間は仕事が一切進まないことだと思う。もちろん、OFF-JTかける時間投資は新人の将来的な成長という形で回収されるのだが、時間は無限ではない。
昔の話であれば分厚い基本情報のテキストを押し付けて「宿題だ、家で復習してこい!(残業代は出ないけど)」で済ませるパターンがあったかもしれないが、今はそうもいかない。「家で仕事のことはやりたくないっす」の一言返事があれば引き下がるしかない。そもそも家で勉強するタイプは好きでやってるだけあって、OFF-JTにはあまり時間をかけなくてもいい。

また、家では勉強しないし興味もあんまりないけれど、SIer出身の中途社員であれば技術や経験はある程度持っている。もともとの業種や担当業務がなんであれ、SIer出身であれば幅ひろーい情シス業務のどこかには経験が活かせる業務があるのではなかろうか。また、言語化が難しいがIT関係の考え方や癖というものを身をもって体験していると理解も早いだろう(過去の経験が理解を遅らせる場合もあるが・・・)。
仮に中途入社の人がネットワーク未経験の人であっても、先ほどの例であれば、”自分のPCでシステムにアクセスしてみること”がどういう目的で、その結果からどういうことが見えてくるのかをある程度理解してくれるのではないかと思う。ところが、家のパソコン1台でやってきましたというだけの経験では、まず症状の出たパソコンとは別のパソコンで様子を探るという発想も出にくいかもしれない。トラブルシューティングというOJTで”自分のパソコンで同じことが起きるかどうか確認する”という体験をしたとしても、なぜそうしたのか、どういうときに有効なのかを理解してもらおうとすると、OFF-JTが必要だろう。もちろん、OFF-JTの形態や時間は1つではないし、何も1ステップの作業を経験するごとに会議室のホワイトボードを使うつもりはない。机の横で立ち話のように5分ぐらいでサクッと説明を終わらせることもある。ここで考えたいのは、”OFF-JTの時間をいかに短縮しつつ仕事ができるようになってもらうか”だ。

なお、私は別にOFF-JTという形態を否定するつもりは全くないし、排除したいわけではない。必要なものという前提のもと、自分のタスクを進める時間とのバランスを取りたいだけだ。私はITスクールの講師ではない。

当然、配属当初はOFF-JTが多いのは当たり前だろう。私的には下図のような感じで成長していってもらえるのが理想だと思っている。

最初の半年か1年か分からないが、OFF-JTにかける時間が減っていき、その一方で経験値(EXP)は増え続ける。最終的にOFF-JTの時間がゼロになることは無いが、配属当初よりはるかに少ない量のOFF-JTでも同じペースで経験を重ねていける状態がいいと思っている(もちろんその通りには進まないのが現実だが)。

答えをすぐに教えない

さて、場合によっては意地悪に聞こえるかもしれないが、”こんなことがありました、どうすればいいですか?”と聞かれても、私は答えや自分の中ではこうすべきという方向性をすぐには言わない。緊急性が高かったり、当の本人が全く経験のないことだったり、そもそも自分でもわからないことであれば別だが、本人に似たような経験を過去にしているようなことや失敗しても影響の少ないリスクが低いことであれば”どうしたらいいと思うか?”と聞き返す(もちろん言葉遣いと聞き返し方は威圧的にならないよう注意しながら・・・)。

”どうればいいか分からないから聞いているのに聞き返すのは酷”という意見もあるかもしれない。もし、相手が普段から”○○ということがあって自分は××したらいいと思いますがどうですか?”と聞いてくるようなタイプなら確かに聞き返す必要はないと思うが、聞き返してみると意外と本人も条件反射的に聞いてきただけで、少し考えてみると良い方向性が浮かんだりもする様子なので聞き返している。面白みのない表現をすれば”相手による”というところだろうか。

”どうするべきと思うか?”と聞いた後の反応として、それでも本人から答えが出ないのであれば方向性のアドバイスをする。一度立ち止まって考えてもらっても答えが出ないのであれば、それ以上聞いても同じこと、もしくは無理やりひねり出そうとしてあらぬ方向に行ってしまいかねないので聞くのは1回だけにするようにしている。

また、”私は××した方がいいと思います”という答えが出てきたら、よほど間違っていない限りはそのままやってもらうようにしている。自分の中ではこうした方がいいという方向性を50として、本人が出した答えが40ぐらいの一致度だとしてもそのままやってもらう。ケースによっては30ぐらいでもそのままやってもらうこともある。10ぐらいしか合っていなくてほぼ間違いであれば理由と一緒に”こういう方向性でいこう”と対応することもあるし、内容的に”身をもって結果の経験をしてもらいたい”というケースであればそのままやってもらうこともある(ただしこのケースは他の関係者に迷惑が掛からないというケースのみしか使わないので、そう頻繁にとる手段ではない)。

できるだけ自分の考えをもって対応する癖をつけてもらいたいのだ。

興味を如何にして引き出すか

技術や経験が無くても興味があったり面白いと思える若手なら吸収は速いだろうし、興味や面白さを感じていなくても技術や経験があれば自分なりの対応を導き出すことができる。

しかし冒頭で述べたような技術や経験や興味や面白いという感覚の全部が無いパターンであれば、せめて興味は持ってもらいたいと思う。砕けた表現をするならば、”情シスでやってる○○という仕事は面白い”という感覚をつかんでもらいたい。
だが、これは非常に難しい問だと思う。ここまで読んでくださった方には申し訳ないが、この点について私はまだ答えがない。自作PCを業務で組ませてみようか、とか考えたことはあるが所詮自分が面白いと思っているだけのことを他の人にやってもらっても面白いかどうかなんて分からない。

これに関しては地道ながらとにかくいろんなものを経験してもらって、面白いと思えるものを見つけてもらうしかないのではと思っている。幸い、中小企業情シスの業務というのは非常に多岐にわたるのでネタには困らない(時間には困るかもしれないが)。
データ消去のため不要なHDDをぶっ壊してみてもいいし、DNSレコード書き換えて表示されるページをダミーに置き換えてみてもいいし、ネットワークループ起こしてブロードキャストストームで通信ダウンしてみてもいいし、PowerShellなりバッチファイルなりで何かを動かしてみてもいいし・・・(もちろんテスト環境とか業務環境とは影響のない範囲で)

こう考えてみると、興味を引き出すために”情シス実験セット”みたいなメニューがあってもいいと思えてきた。検証環境を準備して、実際に設定変更や接続をしてもらって、その結果どうなるかを一通り体験して解説する、という流れだ。感覚的には小中学校の理科の実験に近い。”じゃあ今日はHDDをぶっ壊してみて、中身がどうなってるか確認してみましょう”みたいなノリで。
しかし実験の題材を考えてシナリオを準備する時間を果たして確保できるのか、やらせてくれるのかどうかは私の上司次第かなぁ、と遠い目にはなってしまうのだが・・・

そういう”情シス実験記事”みたいなものは作成してみようか。料理サイトの構成を参考に”材料:DNSサーバ、クライアントPC、インターネット接続”みたいな感じで遊び心を重視してみると良いかもしれない。

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