書籍紹介:ChatGPTと語る未来
当ブログ初の試み、書籍紹介です。今回は日経BP社から発行されている『ChatGPTと語る未来』についてご紹介します。
こんな方におすすめ
- AI(特にGPTなどの生成AI)が未来に与える影響を心配している。
- 将来、自分たちの生活がAIでどう変わっているのか気になる。
- AIが人間にとっていいものか悪いものか判断しかねている。
- AIをどうやって仕事に活用していけばいいか分からない。
AIの技術的な面や具体的な使い方(質問の仕方)についてはほとんど掲載されていません。そのため、AI技術そのものを学ぼうとされている方には向いていませんが、非IT職や経営層などIT技術に詳しくない方でも内容を理解できると思います。
AIは人間の補助でありツールである
本書の表紙には『AIで人間の可能性を最大限に引き出す』とありますが、これこそ本書最大のテーマだと思います。少し具体化すると、AIにすべてを任せてしまうのではなく、AIの出力を取り込んでより良いものを生み出すことができるという考え方です。
本書はこの立場を見事に体現していると私が感じたのは、著者に『リード・ホフマン』と『GPT-4』が記載されており、本文中でもホフマン氏とGPT-4の対話をもとに議論を展開して見事書籍に収めているということです。
おそらく、GPT-4に「ChatGPTが人間に与える可能性について1冊の書籍にまとめてほしい」みたいな指示を与えたとしてもこのような書籍は完成しなかったと思います。逆にホフマン氏だけでこの内容の書籍にまとめることは難しかったのではないかと思います。
本文中ではシナリオライターがGPT-4を使ってより良いシナリオを作成する様子が具体例として挙げられています。
余談ですが、この書籍に『AIは副操縦士』という表現がでてくることと、MicrosoftのAIサービスがCopilot(副操縦士)という名前なのは偶然か必然か・・・
情報格差の拡大
デジタルディバイドという言葉はすでに少し古い言葉かもしれませんが、AIの普及で格差は拡大すると私は感じました。つまりAIを使いこなして生み出される製品やサービスと、使いこなせないままに生み出される製品やサービスの間で差が広がるということです。
本書の中でも、AIを使うことでより高いレベルのアウトプットが得られるとしつつも、AIを使わないアウトプットは勝てない可能性を指摘しています。同時に、『AIのせいでブルーカラーかホワイトカラーかを問わず、一部の仕事がなくなってしまうとも予想している。』(第6章 仕事が激変する p.127)とありました。
残念ながら、本書を読んでいる私自身もその予想には同意する部分があります。どんな仕事がどんな風に格差が拡大していくのかは第6章をご覧いただければと思います。
AIの出力は正解ではない場合が意外と多い
AIが嘘の出力をする現象をハルシネーション(幻覚)といい、その出力は全面的に信用してはいけないことを示しています。本書でもホフマン氏は、GPTの出力をファクトチェックする必要があると述べています。
大抵の人は「100%完璧なシステムは存在しない」と潜在的には感じているかと思いますが、私は自分自身が想像していたよりもはるかに高い確率でハルシネーションが発生していると思いました。
100%ではないけど90%ぐらいは正しいんじゃないかな、という感覚で使用しているとまずいと感じるぐらいです。
本文中に引用元の掲載はありませんでしたが、GPT3のハルシネーション出力率は41%というOpenAIの報告もあるようです。
このような側面もAIは補助的に使用するべきという立場を強化しているのかもしれません。
でもそんなに悲観する必要はない
この記事でも本書でもAIが与える悪影響が取り上げられていますが、それほど悲観する必要はないと私は感じました。しっかり向き合えばより良い未来が待っている気がします。
その具体例はいくつも本書の中で紹介されていますが、私はWikipediaの例が一番印象に残りました。2000年代中盤の記事から引用されたWikipediaの批判内容や懸念点が、ほぼChatGPTにも当てはまるような内容だったからです。
つまり、人類は過去にも革新的な技術が登場する度に何らかの懸念を抱きながらも、結局はその技術を日常生活で利用しているということです。そしてChatGPTなどのAIはまさしく今、革新的な技術が登場したところであり、何らかの懸念があって当然でしょう。
きっと何年か後には誰もがAIを活用してより良い未来にしながらも、誰かは悪用したり思わぬ事故を起こしたりすることになるのだろうなと思います。このことは現代の自動車、飛行機、スマホ、PCなどほとんどの技術にも当てはまることだと思います。
※AI活用ということで一部画像はBing Image Creator(DALL-E)さんに作成してもらいました。
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