SSD換装のひそかな罠、3.5インチブラケットには気をつけろ
以前、HDDからSSDに換装する方法をいくつか紹介しました。
前回の記事では、どうやってHDDのデータをSSDへ移動させるかという意味合いでしたが、今回は物理的なPCへの組付けのお話です。
デスクトップPCのHDDをSSDに換装するときにお世話になる変換ブラケットでトラブル体験がありましたのでご紹介します。
2.5インチと3.5インチ
HDDやSSDといった補助記憶装置は、PCメーカーが異なっても接続ができるようにコネクタや設置用ネジ穴の位置や大きさが規格化されています。
その種類にはいくつかありますが、現在圧倒的に普及しているのが2.5インチ規格と3.5インチ規格です。
インチは長さの単位ですが、一体何の長さかというと”HDDの円盤の直径”です。
この直径が2.5インチ(約6.4センチ)のHDDが収まるよう、ネジ穴の位置を設けているのが2.5インチ規格です。
同じように直径3.5インチ(約8.9センチ)のHDDが収まるように設計されているのが3.5インチ規格です。
なお、これらの規格はHDDの直径を基準としていますので、厚さ方向については決め事はありません。
同じ3.5インチ規格HDDでも、内蔵されている円盤(プラッタと言います)の枚数が多ければ多いほど厚さが増えてきます(この辺を失念して自作PCで失敗することもある)。
厚みが変化するとは言っても、それでねじ穴の位置が変わっては統一できませんので、厚みが増えてもねじ穴の位置は変わらないようになっています。
ここまでの説明を踏まえると2.5と3.5の2つの規格はHDD専用に思えますが、SSDの場合は2.5インチ規格が採用されています。
『SSDに円盤は入ってないだろ!』というツッコミが聞こえてきそうですが、確かにその通りです。
それでもSSDで2.5インチ規格が採用されているのは、今回のSSD換装みたいに付け替えられることや広く流通しているPCケースでも設置できるようにするためでしょう。
技術的にSSDは小さな半導体部品なので、2.5インチケースほどの大きさは必要ありません(実際により小さく実装されたM.2というものもあります)。
ですが、どんなPCケースでも搭載できるようあえて2.5インチ規格の大きさに合わせています。
2.5インチと3.5インチの互換性
この2つの規格には互換性がありません。
当たり前の話ですが、2.5インチしか収まらないスペースに3.5インチHDDを入れることなんてできませんし、逆に3.5インチ用の場所に2.5インチを取り付けようとしても大きすぎてブカブカです(というかネジ留めできない)。
ただし、2.5インチ規格を3.5インチ規格に変換するブラケットを利用することで、2.5インチ規格のSSDを3.5インチ規格のケースに取り付けられるようになります。
わざわざブラケットを準備してまで無駄に思えますが、この性質を利用すると”デスクトップPCもSSDに換装する”ことができます。
ノートPCに搭載されているHDDはサイズを抑えるため2.5インチ型がほとんどですが、デスクPCに搭載されているHDDはアクセス速度や放熱性を重視して3.5インチ型であることがほとんどです。
当然、3.5インチ型HDDは3.5インチ型のケースに収まっていますので、SSD換装するときはこの3.5インチスペースに2.5インチSSDを搭載しようという発想になるわけです。
『3.5インチSSD買えばいいんじゃね?』という発想もありですが、少なくとも私は3.5インチSSDなんて見たことないです(あったらそれはそれで興味深い)。
そんなわけでデスクトップPCのHDDをSSD換装する際には変換ブラケットも一緒に準備することになります。
ブラケットのねじ穴
ここからはITのお話は少し離れて機械的な話(といってもネジ穴の話)です。
パソコンのパーツを固定するのに釘を打ち込むわけにはいきませんから、基本的には小さなネジを使うことになります。
2.5インチSSDをブラケットに搭載するときは下の図のようになります。
手書き感満載(というかまさしく手書き)の図ですが、ブラケットの底からねじを差し込んでSSDを固定(緑線)し、ブラケットの横にあるメネジへねじを差し込むことでケースと固定(赤線)します。
いろんなメーカーからブラケットは発売されていますが、おおよそ上図のような構成です。
赤いメネジの位置は3.5インチHDDのネジ位置と同じため、3.5インチのケースに2.5インチのSSDが固定できるという寸法です。
インチネジとミリネジ
さて、ここで時々問題となるのがブラケット側面にあるメネジです。
3.5インチHDD側面のネジはインチネジですが、ブラケットのメネジはメーカーによってインチネジだったりミリネジだったり統一されていません。
ちなみにインチネジはねじの呼び径単位がインチ、ミリネジはミリという違いがあり、互換性はありません。
この違いによる影響としては、ブラケットを取り付けようと考えているデスクトップのケースがインチネジしか対応していない場合があります。
そうなると、ミリネジブラケットはインチネジケースには取り付けられませんので、最悪ブラケットがゴミになります。
結論として、デスクトップPCの3.5インチHDDをSSDに換装するときはインチネジしか使えないパターンかどうか確認してください。
少し厄介なことに、PC部品の設置に使われるインチネジとミリネジは大きさが結構似ている(インチネジの方が大きい)ので、たまに気付かないことがあります。
その場合、ミリネジ穴に無理矢理インチネジを差し込んでしまい、ミリネジ穴をつぶしてしまうこともあるので要注意です。
なぜインチネジ依存になるのか
理由としてはHDDのPCケースへの固定方法の違いがあるためです。
下の図のような固定方法であれば、ブラケットがインチネジでもミリネジでも固定可能です。
ですが、下の図のように防振専用ネジやメーカー特有の機構があった場合、HDD側面のネジ穴はインチネジなのでブラケットもインチネジでなければなりません。
このような特殊機構は自作PC勢からすると『はあ?そんなの見たことねえよ』な感じですが、メーカー製PCではこのパターンがあります。
このパターンでは取り付け済みの専用ネジをブラケットにも使わないと固定できません。
さらにHDD側面のネジ穴は全てインチネジなので、ここでインチネジ依存が発生するわけです。
この機構のメリットとしては、ネジ止めするための工具が不要なのでケースを小さくできることです。
特に最近はデスクトップPCもこじんまりとしてきたので、こういうところで工夫されていることがあります。
当然、設計者はHDDをSSDに換装するなんてことは考えていない(というか初めからSSDデスクPC買え)ので、ブラケットとの相性問題が発生してしまいます。
まとめ
SSD取り付け用ブラケットを購入するときは、必ず取り付け可能か事前確認(特にメーカ製PC)しましょう。
しっかり確認しておかないと、どこぞの社内SEみたいにブラケットのネジ穴をつぶしたり、使えないブラケットを泣く泣く捨てる羽目になるので気を付けましょう。