Internet Explorerのサービス終了に備える(その2)
以前、IEのサービス終了に備えるという記事を投稿しましたがその続きになります。
今回は”社内にIE依存のアプリがある”方へお送りします。
前回はMicrosoft365サービス利用者+デフォルトブラウザがIEの方がメインでしたが、大多数の社内SEさんが頭を抱えているのはこちらのパターンだと思います。
早速、社内SEとして語ってみたいと思います。
どんな選択肢があるのか?
IE依存システムに切り込みたいところですが、そもそも今回のIEサービス終了を踏まえてどんな選択肢が残されているのか並べてみましょう。
あとはアプリごとに適切な方法がどれなのかを考える、という流れで進めます。
ちなみに、ここでいう”IE依存”とは”そのシステムをEdgeで開いたときに運用上看過できない不具合が発生する”と定義します。
Edgeで起動したときに画面の表示が少しズレるとか処理時間が若干遅くなる、みたいな受容可能な変化は”Edgeでも使える”と判断します。
Edgeで起動したときに計算が実行されないとかボタンをクリックしても反応がない、みたいなシステムとして動作してないパターンを”IE依存”とします。
- Edgeで動くように改修する
- そんな古いシステムを使うのはやめる
- EdgeのIEモードを使う
- オフライン化してでも無理矢理使う
いくつか挙げてみましたが、それぞれ説明します。
Edgeで動くように改修する
発想としては超単純に”Edgeで動かないなら動けるようにすればいいじゃない”という発想です。
発想は単純ですが対応としては至極真っ当です。改修に時間や費用があまりかからない(もちろん理想はタダ)場合に有効です。
使っている人数や規模の割には改修費用が高いという費用対効果が低い場合は避けられがちです。
また、ただ単に経営資源に対して改修費用も時間もかかりすぎる場合は基本的に経営陣には渋られます。
改修見積書を見せたとたんに「もっと安くなんないの?」とか「社内で何とかできないの?」とか言われること請け合いですが、頑張って懇切丁寧に説明して口説きましょう。
無理して専門知識がないのに(ある人は問題ないですが)システムをいじくって不具合起こしたらかなり責められます(あんたが社内でやれって言ったじゃん、とかたぶん通用しません)。
パッケージ品でサポートが切れていて後継品が無いとか、別ソフトを選定・導入する時間は無いみたいな板挟みにあってEdgeで動くよう改修できない人は別の方法を考えることになります。
そんな古いシステムを使うのはやめる
極論です。そもそも使うのをやめられるシステムなら何も悩まずにやめればいいです。
が、意外にもちょっとした工夫で使うのをやめられるシステムというのは潜在しているかもしれません。
例えば、そのシステムを使った業務そのものが必要ない場合です。
業務担当者に「なぜそのシステムを使って業務をしているのか?」と聞いたときに「前の人がやってたから」とか「あの人にこうしろと言われたから」みたいな回答が来た時は、そのシステムを捨てられる可能性があります。
特に息の長いシステムとかだと、そのシステムのアウトプットを渡した先の部署で別の形式に手動で違う形にしてました、みたいな開けてビックリなパターンもあります。
なので、『このシステム、なくせるんじゃないか?』と疑念の湧いたときは関係者を集めて現状を確認しあうことが必要です。
それでいざ話し合ってみると「そんなことしてんの?」という流れになればほぼ勝ちです。
難しいのは関係者に”権限の高い&長いことそのシステムを使っている”人がいる場合です。
この2つの最強装備は”今の仕組みを変えたくないという思いを具現化する”という能力を発現させます。
こうなるとその人のさらに上の権力者にすがることになりますが、こういう人が取締役だったりすると社内SE的にはほぼ詰みです。
システム改修もできない、使うのもやめられないというダブルパンチを食らった社内SEはまた別の方法を探り始めます。
EdgeのIEモードを使う
Edgeには画面はEdgeでもIEのエンジンを使ってブラウザを機能させるIEモードが搭載されています。
詳しい動作や設定方法は他サイトさんがこれでもかと紹介されているので割愛します。
Edgeというブラウザとはいえ動くのは従来のIEエンジンなので原理的にIE依存のシステムでも動作するというのが謳い文句です。
Microsoftによれば2029年までEdgeのIEモードはサポートされますので、この機能を使えばしばらくは乗り切れるということになります。
「やったね!これで一安心だ!」という社内SEさんの歓喜が聞こえてきそうですが、よく考えると実はそんなに単純な話ではありません。
IEモードで動くか絶対確認しろ!
前述のとおりIEモードはEdgeの中でIEのエンジンを動かすことから互換性の高さを期待されていますが、まず注意してほしいのはIE11のエンジンが動くことです。
そもそもWindows10にはIE10とか9みたいなIE10以下は搭載されていないので、こいつら依存のシステムは動かないかもしれません。
「はあ?IE10以下依存なんていつの時代だよ?」とお思いの方がいるかもしれませんが、見落とされがちなのがIE11で使える”互換表示設定”です。
互換表示設定はIE10以下をIE11でも使えるようにする仕組みですが、EdgeのIEモードは設定がIE11の設定を引き継いだり引き継がなかったりしますので必ず検証してください。
一応、IEモードで互換表示設定を動かす方法はあるらしいので光は途絶えていませんが、それなりに覚悟して時間を確保して検証しましょう。
他にもCookieを扱ったりプラグインを使っていたりjavascriptが動いたり安全なサイト登録してあったりすると要注意です。
それも一部分だけが動いただけで安心せずに、使う機能全部を試しましょう。あとあと動かない箇所が見つかっても、Windows Updateにより縛られているので後戻り(ロールバック)できません(Updateファイルを削除すれば動くかもしれませんが、システム利用者のPC全台できるのか?という話が出てきます)。
サーバーがいつまで動くか確認しろ!
まず一般論として、胃が痛い現況のIEでしか動かないシステムは、社内でサーバーが動いているオンプレミスシステムが多いです。
なぜならクラウドサービスやSaaSの場合、”サポートされたセキュリティの確保できるブラウザで利用できるシステムを提供する責任”は基本的にサービス提供側にありますので、社内SE的には自席の椅子にふんぞり返って改修されるのを待ってればいいです。
油断していると”サービス終了します”という大変な状況になる場合もありますが、今回はそのパターンは除きます。
話を戻してオンプレミスシステムということは、社内でハードウェアとしてのサーバーが動いています。
そしてもちろんサーバーにもサポート期限というものがあって、サポートが切れたり修理部品の在庫が切れたりすると故障時に修理できません。
そして一般的にサーバーの耐用年数は5年ぐらいなものです。仮に今動いているサーバーが3年経過していればあと数年でサーバーの寿命です。
OSのサポート期限もあります。Windows Server 2012,2016やRed Hat Enterprise Linux 6,7などは2029年より先にサポート期限です。
そうなったときに”IE依存という古いシステムが新しいサーバーやOSに移行できるのか”という問題が立ち上がります。
もし移行できないと発売元やベンダーから通達されてしまえばEdgeのIEモードなんて意味ないです。
壊れたら即おしまいのサーバーやセキュリティの低いOSを使い続けるリスクを受容できる猛者がいるかもしれませんが、その時は”停止するリスクが高くても問題ないようなシステムはいらなくね?”と立ち返ってみてください。
EdgeのIEモードはあくまで延命措置にしか過ぎないことは忘れないでください。
オフライン化してでも無理矢理使う
ここまで辿り着いてしまった社内SEのみなさん、かなり闇は深いです。
改修もできない、捨てることもできない、IEモードもダメ。そんなあなたは四面楚歌と板挟みと背水の陣で逃げ場がなく悩みに悩まれていることでしょう。
そんなあなたに最終手段です。今のうちにサーバーと古いバージョンのWindows10もろともオフラインという名のダークサイドにぶち込んで2022年以降もIEを起動させる方法です。
現状、IEが起動するWindows10環境がインターネットから隔離されることでMicrosoftは手が出せなくなります。そこを利用(悪用?)して2022年以降もIEをアプリとして立ち上げ現行のシステムを継続利用します。
私的には絶対にお勧めできない方法ですが、あらゆる事情に翻弄され打つ手なしとなった社内SEの方がダークサイドに身を落とします。
ただし、IEモードの項目でもお伝えしましたがOSのサポート期限という課題が解決(というか抹消)したとしてもハードウェアの寿命からは逃れられません。
サーバーOSを仮想化してVMバックアップしてハードウェアが壊れた時にはリプレースする準備をしておけばハード故障も乗り越えられるかもしれませんが、サーバーだけならともかくクライアントPCもやらないといけません。
そんな環境を構築できる技術と時間と費用があるなら別の方法を考えましょう。
「オフライン環境に移さないといけないハードウェアがサーバー1台にPC数台程度だからモウマンタイ!」というお声も頂きそうですが、もう一度聞きます。
そんなシステムが必要かどうか検討してみる価値はあるのではないでしょうか?
まとめ
いろいろと申し上げましたが、『これが正解!』という汎用的な方法はありません。
企業の規模によって判断が異なることもあるでしょうし、一見不合理な選択肢でも社内事情によっては取りうる選択肢になります。
しかし、Microsoftと決別しない限りは2022年にIEはアプリとして起動しなくなります。
まだ1年ある今のうちにIEのサービス終了に備えなければ、対応が後手後手になってしまい無駄な費用や時間がかかってしまいます。
少しずつ確実に脱IEを進めていきましょう。