ChatGPTの登場で報告書の立場はどうなる?
今回はChatGPTをめぐるいろんな動きの中でも、報告書のありようをどうするべきなのか私個人の意見を日記としてまとめてみました。
ChatGPTを業務利用するときの懸念
OpenAI Projectは早くもGPT4.0を公開し、複雑な日本語により対応した形でリリースしてきています。Microsoftも個人向けアカウントを登録することでbing検索をAIに助けてもらえるサービスをリリースしました。すでに近い将来に企業向けアカウント(おそらくはAzure ADベースのアカウント)にもbingチャット機能をリリースするとしています。
また、Microsoft OfficeやDynamicsといった製品にもGPTベースの機能を開発中であり、GitHubには先行して機能がリリースされ開発者を少なからず驚かせた模様です。
スマホにせよチャットツールにせよ、IT技術の利活用は民間⇒企業という手順を踏んできたものが少なくありません。ChatGPTも同じような流れにあるように思えていまして、今まさに企業の業務にChatGPTのようなAIを導入するかどうかの判断を迫られるようになってきています。
ところが私の脳内にいる保守思想がほのかに語りかけてくるのです。
「そんなものを導入したら報告書をAIに書かせてサボるやつが出てくるからダメだ!」
さて、このいかにも言われそうな命題にどういう立場をとるべきか考えてみました。
そもそも報告書の目的はなんでしたっけ?
世の中には多種多様な報告書が存在します。私自身も思い返してみれば何十という報告書を作成してきました。
そもそもそれらの報告書はどういう目的で作らせている(あるいは作らされている)のか振り返ってみます。
セミナーや教育などの受講報告書
この手の報告書は”セミナー費用や従業員の時間という投資の効果を測る”ことが目的だと考えます。
会社がセミナーを受けさせたり教育を行ったりするのは投資です。中には無償オンラインセミナーなどもありますが、従業員の時間が使われる以上は人件費という費用が発生します。
そして営利企業の根本には”投資と回収”があるはずです。そしてセミナーや教育の受講を命じた会社側は、その施策に効果があったのかどうかを知ろうとします。
報告書を作成する立場になってみると、受講したことで得られた”組織にとっての利益”を報告と説明するべきであると思いますし、仮にその受講が役に立たない内容だったとしたら”組織にとって利益にならない”という報告と説明をするべきと思います。
ネガティブな報告であっても、組織は”次からは別のセミナーを受けさせてみよう”という判断ができます。
※役に立たなかったという報告をしてきた従業員に対して評価を下げるようなケースを耳にしたりしますが、役に立たなかった理由が納得できる形で説明されていれば私は評価を下げるのは反対の立場です。
業務の実施報告書
この報告書は報告書を作成する自分のためだと考えています。
日々遂行している業務を記録することで、自分自身の得意不得意が見えてきます。また、年1回など定期的に行われる業績評価でも数か月前のことが記録として残されていると評価するほうもされる方もやりやすくなります。
特に情シスや社SEは実施する業務が多岐にわたるのでお勧めです。私自身も後から見返してみて”こんなこともそういえばやっていたなぁ”と思い出して評価の対象になったりもしました。
出張や移動などの報告書
この報告書は経費精算や出張手当の計算などに利用するために作成することが多いと思います。
このタイプの報告書は、「私はこうした方がいいと思います」というよりは「私はここに行ってこの作業をして○○時に戻ってきました」という事実ベースの内容が必要でしょう。
これらの報告書を総務なり経理なりが確認することで交通費精算や出張手当の支払いが処理されます。
営業活動の報告書
最近はCRMとかSFAといった営業支援システムがあり、このようなシステムを導入している組織であれば営業活動をシステムに入力することになります。
そうではなくともExcelやWordなどのフォーマット、もしかすると手書きかもしれません。
ではなぜ営業活動の報告書を提出するのかというと、いま担当営業が引き合いしている案件が受注できるかどうかの判断材料とするためだと思います。
もうすこしかみ砕いてみると、今の案件が受注というゴールに向かって進んでいるのか後退しているのか知るためです。
受注に向かってどんどん進んでいるのであれば営業担当という人的リソースをそのままその案件に投入しますし、逆に受注からどんどん遠ざかっているようであればさっさと失注扱いにして別の案件に回すべきでしょう(もちろん会社の経営状況で一見すると損な選択をしないといけないこともあります)。
懲戒、処罰などの報告書
ルールとしてやってはいけないことをやってしまった、故意ではないにしても大きな損失を出してしまった。そういった場合に処分の一環として報告書を書くこともあります。
砕けた表現をするなら反省文というやつですね。
この報告書の目的は再発防止でしょう。同じようなミスを犯してしまわないようにします。この報告書を個人が作成する場合は、その個人に向けて”同じようなミスは絶対しないように”という意思が込められているように感じます。
仮にこの報告書を提出してきた人が同じことを何度も繰り返してしまう場合、報告書を作成する意味はないといえるでしょう。
ChatGPTが与える影響
では話を戻してChatGPTがこれらの報告書にどのような影響を与えるでしょうか?
では仮にセミナー受講報告書をChatGPTに作成させたとします。報告書の文体はよく整っていて、セミナーで得られたことや感想が並んでいるとします。
では仮にこの報告書を受け取った立場として、当然AIが書いた文章などとは知らないとして、この報告書をどういう基準で評価すればよいのでしょうか?
私がおすすめする評価基準は”具体的な今後の行動が書かれているかどうか”です。
どんなに良い表現や分かりやすい言葉が並んでいたとしても、行動が変わっていなければ効果(=投資の回収)は無しです。
例えばパワハラ防止研修を受講したとして、”パワハラはいけないことだと再認識した”、”今後はパワハラを起こさないよう注意する”などと書いてあっても、私は受講の効果なしと感じます。
”パワハラはディスコミュニケーションが要因の1つなので2週間に1回、一緒に業務の振り返りをする”、”自分には言いづらいこともあるだろうから、自分を経由しない相談窓口を作って周知する”などが書いてあると「効果あったな」と感じます。
もしあなたが報告書を作成する立場の方であれば、AIに聞くべきは”パワハラ研修受講報告書の作り方”ではなく”パワハラ防止の具体的な行動”です。
そして報告書として記載する以上は、その行動を守るようにしてください。
目的に沿うフォーマットに見直そう
報告書フォーマットのよくあるパターンとして、まるで原稿用紙をそのまま転記したかのような、でっかい四角が鎮座するフォーマットです。要はこの四角の範囲で書きたいことを書いてください、ということです。
ある程度の四角の大きさは必要ですが、A4用紙の3分の2を埋めるような記入欄は反対の立場です。先ほどの受講報告の場合、割り切って”今後の行動予定を400字以内”とかでもいいと思います。
なぜなら目的は”組織としての利益があったかどうか知りたい”からです。
裏を返して冷たい言い方をすると”あなたの感想はどうでもいい”とも取れてしまうのですが・・・
業務の実施報告書であれば、やったことの短文を箇条書きするだけでOKだと思います。なぜなら目的は”あとから見返して何をやったか思い出すため”だからです。長文で業務実施報告書なんて書かなくても、自分が経験したことであれば短文でも思い出せます。
効果測定をしよう
すべての報告書に共通することではありませんが、できるだけ効果測定をしてみましょう。もしくは効果測定の物差しとなる指標を決めておきましょう。
技術系の講習で何かを学習してきたのであれば、実際にその技術を使って何かをしてもらってみましょう。
ただ、時間や費用がかかることも多いのでやりすぎは禁物です。
できるだけ長文の報告を避けよう
そもそも長文の自然言語というのは読んで理解するだけで大変です。超大作な報告書を見て「よく頑張って書いたね、評価してあげよう」とは日本の会社では容易に想像できそうですが、そもそもそれだけの大作を書き上げるためにどれだけの時間がかかっていることか想像すると、組織にとって有益とは言えないでしょう。
報告が長文になってしまうのは、そもそも報告の目的が明確になっていないためではないかと思います。
よく耳にする「上司が報告書を読んでくれないから意味がない」は報告書が長文になっているケースが多いように感じます。
まとめ
そもそもChatGPTに代替されて困らないような報告書なら無くても一緒ではないでしょうか?
ChatGPTに代替されて困るということは、本来報告書を提出させることで達成したい目的があって、ChatGPTで報告書を作成することでその目的が阻害されるから困るのだと思います。
では報告書を作成する目的はなんなのかを見直して原点に振り返る必要があるのではと思います。